教養ゼミ体験授業の報告 (平成28年年5月23日)
担当ゼミ責任者 杉野利久
地(知)の拠点担当教員 大泉賢吾・天野通子・細野賢治・山尾政博
持続的な河川漁業に取組む太田川漁協
広島市安佐北区に事務所を構え、河川漁業を対象にする太田川漁協は、アユ漁を営む漁業者の皆様が組合員です。杉野ゼミの学生たちは、太田川の資源と環境を守り、長年にわたって河川漁業に従事してこられた漁協と組合員の皆様にお世話になり、体験学習を行いました。
午前の部は太田川支流の吉山川にて河川清掃と葦刈りの清掃活動、アユの放流と塩焼き体験、でした。午後の部は、理事・総代・職員の皆様による川の生き物の観察、漁具・漁法の紹介、資源や環境に関するお話しと漁協の活動の紹介、などを行っていただきました。
アユ漁の解禁に向けて行う河川清掃
学生たちが体験した河川清掃は、アユ漁の解禁日の6月1日前に漁協組合員の皆さんが、各地区で一斉に行う活動です。河川清掃のガイド役を務めていただいたのは、漁協の地区総代のお二人です。先頭になって川に入っていただきました。学生たちは川の両岸に分かれ、流れのはやい場所を避けながら、上流から下流に向かって1キロ以上、ゴミを拾いながらゆっくりと歩きました。水の流れは思ったより速く、川底には大小さまざまな石があり、最初は歩くのがやっとでした。アユ漁業のために川を清掃される漁協組合員のご苦労がよくわかりました。次第に歩くのになれて、ペットボトル、ビニール袋のほかに、様々なゴミを拾いました。ゴミは思ったほどの量はありませんでしたが、それでもすぐにごみ袋がいっぱいになりました。
葦刈りにも挑戦をしました。長く伸びた葦は、昔は牛の餌になったそうです。今は利用する人がいなくなり、伸び放題なので管理が大変になっています。学生たちは鎌を使って、ほんの小面積の葦狩りを体験いたしました。
アユの放流、河川観察
太田川漁協ではアユの放流はすでに終わっていましたが、御厚意で体験学習のために特別に放流を体験させていただきました。昨年と同様、理事さんに教えられたように、学生たちは、“大きくなって子供を増やして帰ってきてくれ”、と念じながらアユを放ちました。
河川観察では様々な生き物をみることができ、網ですくった生き物の名前は、午後に開かれた「水辺の観察教室」で組合員さんから詳しく伺いました。馴染みのない淡水魚が多かったのが印象的でした。
水辺の教室、アユ漁業、河川の環境
太田川漁協は、地域の小学生などを対象に「水辺の教室」と題して、移動式の水族館活動を行っています。アユの縄張り、それを利用したおとりによる釣の実演(タライの中)は、とても興味深いものでした。
アユ漁については、投網、建網、竿釣りなどの漁具を見せていただきました。学生たちは投網にチャレンジしましたが、難しかったようです。
アユの漁獲量の変動が激しい要因について、詳しい解説がありました。漁業者に加え、遊漁者も減少しています。河川漁業、アユ漁業については漁業権があり、漁獲禁止期間などが設けられています。地域独自のルールを作り、漁業者はもとより、遊漁者にも守ってもらうよう監視活動を行っています。
太田川にはたくさんのダムがありますが、それが河川の環境やアユの漁獲量に与える影響について、お話しがありました。いずれの話題についても学生たちは熱心に話しを聞き、また、活発に質問をしていました。
資源と環境を守る活動の意義
太田川漁協では、河川の資源と環境を守る様々な活動を続けています。河川清掃のほかに、産卵床の整備、放流活動なども行っています。資源を維持するために、広島市の協力を得て、アユ、アマゴ、ウナギ、モズクガニなどを毎年のように放流しています。川の水質には注意をしています。漁業は台風などの影響を受けやすく、ダムの工事や放水などによる影響もあります。
太田川漁協の皆さんが広大生に期待すること
組合員の皆さんが広大生に期待していることは次の二つ。ひとつは、魚を好きになってもっと食べて欲しいこと。今ひとつは、水質について勉強し、水産資源を持続的に利用できるようにして欲しいことでした。
参加した学生たちは河川漁業に関心をもち、水辺の生き物に興味をもったようです。太田川漁協と組合員の皆さんが、資源の増養殖に努め、ルールを守って漁業を続けておられることを理解してくれました。そうした感想と感謝が学生から述べられ、一同で記念撮影をいたしました。
暑い1日でしたが、とても充実した体験学習でした。
(謝辞)
西川ゴム株式会社様
この体験学習を実施するにあたり、川辺に工場のある西川ゴム株式会社様が、駐車場のご提供とトイレの使用を快く引き受けていただきました。また、学生たちに、飲み物とパンを差し入れていただきました。日曜日にも関わらず、ご親切にしていただき、COC担当教職員、学生、深く感謝しております。ありがとうございました。