漁港・海面のごみ収集体験と海域利用の学習(平成28年7月9日)
担当ゼミ責任者 浅川 学
地(知)の拠点担当教員 大泉賢吾・天野通子・細野賢治・山尾政博
漁船漁業とカキ養殖業が盛んな安芸津漁協
広島大学の地元、東広島市で唯一海に面した町が安芸津です。ここは、かつては瀬戸内海の交通の要衝として賑わうとともに、漁業の基地として多くの漁船が集まってきました。小型機船底曳網(いわゆる、小底)は80経営体を数えたそうです。現在は小底が9経営体、刺し網29経営体、タコツボ6経営体、かご・巻き網27経営体と以前に比べて大きく減少しています。漁船漁業を行う経営体は減少していますが、穏やかな三津湾に面した条件を活かして、9経営体がカキ養殖を営んでいます。
安芸津漁協(柴孝利組合長)は正組合員33人、准組合員22人の比較的規模の小さな漁協です。ここでは、組合員の皆さんが協力して豊かな海を守る活動に取組んでこられました。エビを漁獲対象とする小型底曳網漁船は、漁の間に引き上げたゴミを港に持ち帰ります。その他の漁船も海のゴミを引き上げます。安芸津漁協は早くから海のゴミを片付けるシステムを作ってきたことで有名です。
海の使い方を学ぶ体験学習
浅川ゼミの1年生10名、TA4名、それに担当教員3名が、安芸津漁協に向け早朝に出発しました。今回は放送大学客員教授の磯部作先生(日本福祉大学名誉教授)に、海底ゴミの専門家として加わっていただきました。現地に到着後ただちに小グループに分けて、4人の学生は漁船2隻に分乗して漂流ゴミの回収に向かいました。残りの学生は港の清掃、先日来の大雨で河川から流れついた農業ゴミ(麦わら類)を片付けました。普段から清掃しているためか、港で回収した量は思ったほどではありませんでしたが、それでも準備した袋があっという間に一杯になりました。
予想以上に多かったのは、大雨で河川から流れ出て漂着した農業ゴミでした。田畑から稲わら類が大量に港周辺に漂着したものだそうです。泥がこびり付いており、処理が大変でした。磯部先生には、海のゴミとは何かを解説していただきました。漂着ゴミ、漂流ゴミ、海底ゴミがありますが、体験学習で漁船を使って回収したのが漂流ゴミ、港で回収したのが漂着ゴミです。磯部先生には、海のゴミを分類するのに用いられる「ゴミ調査・データーカード」をご紹介いただき、学生はこれを使ってゴミを分類しました。稲わらを除いて、一番多かったのが飲料缶、ついでペットボトルでした。水産・釣関係のものが少なかったのは、漁協組合員の皆さんの日頃の努力の賜物だと思われます。
多様な漁業活動についてのお話し
安芸津漁協の組合員の皆さんは、瀬戸内海の多種類の水産資源を対象とする漁業種類を営んでいます。刺し網漁、カゴ・巻き網漁、タコ壺漁、しら(ろ)うお漁、なまこ漁など多彩です。それぞれの漁業を営む組合員の皆さんから、漁の仕方など詳しい説明がなされました。漁協に免許される共同漁業権についても話しが及びました。県は安芸津漁協に482台のカキ筏を使って養殖する、区画漁業権を賦与しています。組合員は決められた場所とルールを守って、カキを養殖します。なお、昼食時には正福寺山公園の展望台に上り、整然と利用されている漁港前の海域の様子を一望しました。
「百聞は一見にしかず」、漁業者の皆さんが繰り返し学生に言った言葉です。機会があれば是非見にきなさい、というお誘いでした。
環境保全の大切さを学ぶ
海のゴミを減らす活動には早くから取り組んでおり、いわゆる漁業ゴミは少なく、一般家庭ゴミ、農業用ゴミが中心です。最近では、「三津湾ヘルシープラン」と呼ばれる海域利用と連携した底質環境の改善等の活動が実施されました。
学生たちは、安芸津漁協の活動から、海を保全しながら持続的に漁業することの大切さを学ぶことができました。
カキ養殖の経営体には若手の後継者がいるようですが、漁船漁業の従事者の高齢化が進んでいます。今後、どのように漁業が営まれるのかが気になります。
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