教養ゼミ体験学習 <平成28年5月28日(土)>
担当ゼミ責任者 河合幸一郎
地(知)の拠点担当教員 大泉賢吾・天野通子・細野賢治・山尾政博
世羅町は、梨やトマト、米の一大産地であるとともに、観光農園や農作物の販売所が多く、6次産業化の取り組みに積極的で、全町で「世羅高原6次産業ネットワーク」を進めるなどで有名な地域です。
世羅幸水農園は世羅高原にあり、幸水梨を中心とした大規模梨園の果樹全面協業経営が行われているものの、果物狩りも楽しめる多品種の果樹園になっているころが特徴です。また、世羅幸水農園の代表原田組合長は、世羅町の6次産業ネットワークの代表も務めるなど、地域連携・共存を図る経営を重視しており、地域農業の中心的役割を果たす全国的にも極めて有名な農事組合法人です。
平成10年には直売施設「ビルネ・ラーデン」を開設し、昨年度から地域と共同で加工施設の整備も行い、ゼリーやチャツネなど梨の特徴を活かした加工品の開発にも積極的に取り組まれています。
今回の教養ゼミ体験授業の工程は、①6次産業ネットワークで新設した加工施設見学や商品開発の説明、②ビルネラーデンで販売している新商品の説明、③原田組合長から世羅幸水農園の概要についての講義、④梨園での摘果作業、⑤お昼は6次産業ネットワークの折重事務局長から世羅町における6次産業ネットワークの活動概要説明、⑥午後はひたすら梨の摘果作業というものでした。
加工施設の見学とビルネラーデンでの新製品の販売状況
世羅町のおける農産加工品のヒット商品は、駅伝で有名な県立世羅高等学校と世羅高原6次産業ネットワークが共同開発した清涼飲料水「世羅っとした梨ランニングウォーター」が有名で、梨の爽やかな風味が特徴になっています。
新たに整備した加工施設では、「なしのチャツネ、なしみつ、なしのコンポート」などを開発しており、ビルネラーデンで販売されているとのことでした。全行程が手作業で砂糖などを添加しないナチュラルな味で体に優しい製品づくりを心がけているとのことでした。
しかしながら、加工品づくりの経験が浅く、また農園で梨を収穫する忙しい時期と加工品づくりを行う時期が重なるなど、課題も多いようです。
原田組合長から世羅幸水農園の概要についての講義
昭和38年に梨栽培を中核にした世羅幸水農園が設立されたが、凍害・台風・世代交代など現在までの苦難の道を歩み、全員の努力で26年に天皇杯を受賞するに至ったことが説明されました。現在は、なし、ブドウ、モモ、スモモなどを生産し、直売を中心にしながら観光農業にシフトし、併せて独自の加工品づくりにも取り組んでいるとのことです。
また、世羅6次産業ネットワークなどといっしょになって、農業経営、観光農園化、6次産業などで多様な展開を進める必要があると話されました。 6次産業化への取り組みとして、梨栽培、せら梨ゼリー、世羅梨ドレッシング、なしのポン酢、梨のシャーベットを製品化・販売しているほか、新しい加工施設での取り組みを行っているそうです。一方、幸水農園の経営の特徴として、完全協業による農事組合法人化を行い、組合員が働きやすい農園をみんなで作っているとのことでした。
梨園での摘果作業
世羅夢公園近くの梨園にバスで移動して、原田組合長とベテランの従業員の方から摘果作業の仕方を詳しく教えていただきました。
梨の摘果は腰をかがめながらの単調な作業を行うものです。この作業こそが梨栽培や梨経営の基本となる重要なものとの原田組合長や組合の方々の強い思いから選ばれた作業であることを十分認識して、学生は一生懸命取り組みました。
摘果作業は、今後形の良い大きな果実になる幼果を選抜するという重要な作業です。特に世羅幸水農園の梨は、大きなものであれば500円以上する高級果実でも有り、みんな緊張して作業に取り組みました。
原田組合長や組合の方は、かなりのスピードで摘果を行われていましたが、実際学生がやってみると数本ある梨の幼果のどれを1本残すか考え込み、なかなか作業が進みませんで した。 だんだん作業になれて、ある程度のスピードで摘果ができるようになりましたが、やはり職員の方のスピードには全く追いつかず、経験の重要性を認識したようです。また、黒星病にかかっている幼果や葉っぱを慎重に取り除いて、病気を防ぐ作業も神経を使うもので、単純な作業の中にも工夫や技術が必要なことを強く感じたようです。
せら夢高原での昼食と講義
世羅台地の「県民公園」と「せらワイナリー」を総称して「せら夢公園」といいます。一方、「せら夢高原」とは世羅町の農業関連団体でつくる「世羅高原6次産業ネットワーク」の愛称で、果樹観光農園・花観光などに毎年たくさんの方が訪れているとのことでした。
果物では、梨・ぶどう・りんご等が有名です。特に世羅梨「幸水」「豊水」は、その豊かで芳醇な味わいのファンも多いこと、また日本最大級の花園もあり、世羅だけでさまざまな花園を廻れることから「花めぐり」をされる方も多いなどのお話がありました。
また、世羅高原6次産業ネットワークの歴史のお話と共に、ネットワーク運営のご苦労などもお聞きし、世羅町の課題の理解につながったようです。
体験終了のお礼
午後の摘果作業を終え、最後に、学生から貴重な体験の機会与えていただくと共に、講義をしていただいた原田組合長や職員の方にお礼を申し上げ、全員で記念撮影を撮りました。
この体験授業授業を通して、学生は世羅幸水農園の経営方針や高い栽培技術への取り組みを深く学ぶことができたように思われます。また、摘果という単調な作業の中に、農業・ 農作業の大切なことを見つけたようです。
さらに、組合の課題として、加工品づくりや6次産業化の難しさ、梨栽培の大敵である黒星病防除の地道な取り組み、広がってきた獣害(イノシシ)への対応などの重要性を学んだようです。
また、組合長から学生の発想やアイデアを生かした世羅梨の新製品開発・ブランド化をして欲しいというお話を聞いて、有名シェフとの連携、ネット販売、出張販売などにも興味を持ったようです。
世羅幸水農園の皆様、せら夢高原の皆様、本当にありがとうございました。