教養ゼミ体験授業と地域講義
担当ゼミ責任者 冨永るみ
地(知)の拠点担当教員 大泉賢吾・天野通子・細野賢治・山尾政博
JA芸南安芸津地域(東広島市)と体験授業概要
JA芸南は広島大学に近く、瀬戸内海に面した東広島市安芸津町、呉市安浦町・川尻町地域が管内となっています。 農業振興を通じて、「食」と「農」と「緑」を守ることを基本コンセプトに、様々な交流連携の取り組みにも力を入れています。
JA芸南の地域は温暖で降雨量が少なく、安芸津のジャガイモ(馬鈴薯)、ビワ、かんきつ類の栽培が盛んに行われています。
特 にJA芸南の特産品であるジャガイモは、水持ちの良い粘土質のレンガ色の「赤土」で、水はけが良いという土壌に特徴があり、おいしいジャガイモを栽培する のに大変適しています。また、管内では多くのかんきつ類だけでなく、ビワも特産になっており、果実とともに「ビワの葉」の活用なども進められています。
今回、体験授業では冨永ゼミ・橋本ゼミの2グループが、ジャガイモの収穫・選別・ほ場の片付けの体験を中心に、昼食時には「新製品として出すビワの葉茶の意見交換」を行いました。
ジャガイモ栽培農家大成さんとJA芸南営農指導員江村さんの講義
講義は、現場感覚がよくわかるようにとの大成さんのご配慮で、安芸津町赤崎にある大成さんのジャガイモ栽培ほ場でお話を伺いました。
既に、ジャガイモほ場では、奥様方が手慣れた手つきでジャガイモの選別を行っていらっしゃいました。ほ場には、複数の種類のジャガイモも準備していただき、その特徴などがよくわかるように、お心遣いをいただいていました。
まず、大成さんからは、安芸津で栽培されているジャガイモの品種育成などの歴史、ジャガイモの持つ可能性(野生種の特性や利用などから)、安芸津 赤崎地区の土壌とジャガイモブランド(おいしさの理由)、ジャガイモ選別のポイント等を熱心に教えていただきました。
安芸津の体験場所から見えるほど近いところに、昔は国の試験場が置かれ、ジャガイモの研究が行われていたそうです。安芸津はジャガイモの栽培に適した土壌であり、食用も栽培されているが、中心は種芋の栽培だそうで、食用よりも安定した収益が見込めるとのことでした。
安芸津のジャガイモは、独特の赤い粘土質の畑で栽培されるが、これはデイサイト質溶結凝灰岩が風化して赤褐色の粘土質土壌になったもので,ジャガイモ栽培に最適な特性を持っているようです。
この土壌で栽培されたジャガイモは、でんぷん質が多く、柔らかくて、きめ細かく甘みのあるものになり、高級ジャガイモブランドとして全国的にも有名になっています。
特に赤崎地区のジャガイモは、温暖な気候と瀬戸の潮風を受けるなどで、ホクホクでヘルシーな大変おいしいジャガイモになっているそうです。
次に、JA芸南 江村さんからは、JA芸南及び地域ブランド安芸津ジャガイモの取り組みについて、JA芸南におけるジャガイモ農家と担い手について、JA芸南におけるジャガイモ加工品づくりと販売について講義をしていただきました。
ジャガイモ栽培農家も高齢化しており、ジャガイモの加工品づくりなど少しでも所得を上げる対策をして後継者が出来るようにJAは努力しているとのことです。
また、この日は広大生の援農ボランティアが、若いご夫婦が栽培されているジャガイモ畑の収穫のお手伝いをしており、広大との連携も一層深めたいと話されました。
なお、体験授業を行った場所は、5月下旬から6月にかけて、白と黄色のコントラストが鮮やかなジャガイモの花が咲き、安芸津湾を背景にした美しい景色が楽しめるとのことです。
な お、大成さんやJAの江村さんとの事前の打ち合わせや体験現場において、①ジャガイモのデンプン含量・ジャガイモの形(球形)、重さなどと品質の関係、② ジャガイモデンプンの特性(他のデンプンとの比較・・)、③安芸津の赤土(水持ち・水はけが良い)、団粒・格子構造、有機物・腐食など安芸津の土は、どの ようにしてできたか、④ジャガイモのホクホク感、肌がきれい、球形になることと安芸津の土の関係、⑤JA芸南で開発したジャガイモ加工品の販売を拡大する ためには(PR方法等)どうしたらよいか、⑥ジャガイモ農家の新たな担い手が戻ってくるためにはどうしたらよいか、という宿題が学生に出されましたので、 発表会に向けて事後学習・発表の準備が行われるようです。
ジャガイモ畑での体験作業
大変天気が良くなり安芸津湾をバックにした景色も美しく見えましたが、作業がはじまる10時頃にはどんどん気温が上昇して、学生にはややきつい作業になりましたが、大成さんや地元の奥様方と一緒に、交流しながら作業が進みました。
ま ずは、朝早くに大成さんが既に掘り取ってあったジャガイモを、ほ場でL、M、Sなどサイズ別に選別すると同時に、形や病痕などの有無で販売できるものと加 工に回すものなども同時に選別しました。この作業では、奥様方の経験と知識を学生に教えていただきながらの作業ですが、大きさ選別の感覚一つにしても大変 むずかしいようでした。
こ の作業が終了したら、次の畝のジャガイモ掘り起こしを行うために、ジャガイモの地上部を鎌で刈って、ほ場脇に片付ける作業です。この作業は、比較的簡単 で、学生の馬力と人数で、大成さんが考えた作業スピード以上に進み、全ほ場の作業が短時間で終わりました。これには、大成さんも大助かりだと喜んでいただ けて様です。
午前中の暑い中の作業が一段落したので、昼食をとるためお借りした赤崎の集会所へ向かいました。
ビワの葉茶の試飲と意見交換
お昼を食べ終わるとすぐに次のスケジュールです。
古来からビワの葉は、薬効の宝庫として知られていたそうですが、広島果実連・JA芸南・おもろい農などが、安芸津の特産になっているビワの活用として「新しいビワの葉茶」を考えているので、広大生に協力して欲しいとのことです。
まず、広果連の土居技師から、①新製品ビワの葉茶の試飲と評価について、②新製品ビワの葉茶の特徴とPOPについて、③新製品ビワの葉茶のシール・箱姿等について、④新製品ビワの葉茶についての説明がありました。
説明のあとは、実際にビワの葉茶をみんなで試飲して、学生と広果連・JAでたくさんの意見交換を行いました。
学生からは、味への率直な評価や販売方法・キャッチフレーズなどについて意見を述べましたが、その発想は土居さんたちの参考になったようです。
また、土居さんからは、この意見を取り入れて新製品とする場合には、ぜひ皆さんでSNSでの広報も検討して欲しい。さらに、広島大学 地(知)の拠点関連商品と位置づけて販売したいというような提案をいただきました。
学生の意見・提案例
- 焙煎時間の短い方はさっぱりしていて、私たちのような若い世代にも飲みやすく、食事のときに飲みたいお茶で、焙煎時間が長い方はより独特の風味が増していて、お茶の味を楽しむのにぴったりだと感じました。
- 高齢女性をターゲットにしているということで、POPやパッケージはよりシンプルで、読みやすいデザインにして、健康効果がある点と、手作りであるという点を前面に押し出してPRしていくことが必要だと思います。
- びわのキャッチフレーズ
びわ茶、めっ茶、いいわ~、いいじゃん!びわ茶!、いいこと いっぱい びわ茶
- ビワを売っている所で歌をながす(みんなが口ずさむような)
(例)お肌が荒れても び~わ~茶っ、真っ黒日焼けに び~わ~茶っ
午後のほ場作業
午前中に地上部を刈り取ったジャガイモ畑で、収穫機をつかって掘り起こしです。この作業は、ジャガイモに傷をつけるなど難しい部分があるので、大成さんの作業の様子を見学しながら、多少のお手伝いをする程度です。
掘り起こされたジャガイモは、午前中と同じようにサイズや商品性を見極めて選別を行いました。今日掘り出したジャガイモは、体験授業が終わるまでに全て選別をしてコンテナに入れ、出荷できるようにしなければなりません。
暑い日差しが照りつける中、真剣な作業が続きましたが、何とか選別してコンテナに全て入れることができました。
最後に、体験作業をご指導いただいた、大成さん、JAの江村さん、広果連の土居さん、地域の皆さんに、学生からお礼を申し上げました。
学生たちは、体験授業を通じて農業の大変さを理解し、援農ボランティアなど自らも主体的に参加して地域に貢献しなければという気持ちが芽生えたようでした。
なお、この体験授業の様子は中国新聞に掲載されましたが、学生は、中国新聞のインタビューを受け、作業(体験授業)や地域課題を知る大切さなどの感想をしっかりと話をしていました。
地域の皆様、本当にありがとうございました。