第1回円卓フォーラム第1部

広島大学 ()の拠点 フォーラム

中山間地域・島しょ部と広島大学

―広島県の農水産業の将来を見据えた交流と連携―

開催日時:2014年12月11日(木) 12:50―16:30
開催場所:広島大学 学士会館レセプション・ホール

 

第1部:学生と地域とのエール交換 (13:00~14:20)

~学生のこれまでの報告と受入地域からのメッセージ~

フォーラムの第1部では、「学生と地域とのエール交換」と題して、体験学習を行った学生と、受入地域の皆さまとの間で、相互に意見や提言・苦言を交換し合い、今後の地域志向型教育のあり方を考えることにした。

 地域との連携を模索した体験学習の経過報告

 司会は、生物圏科学研究科博士課程前期2年生の加藤愛さんが勤めた。第1部のプログラム紹介の後、教務補佐員(TA)として1年生の体験学習に同行した三木香さん(生物圏科学研究科博士課程前期1年生)が、「地域との連携を模索した体験学習」と題して経過を報告した。

 今回のフォーラム開催のきっかけとなった地域体験授業の教養ゼミは、大学入学後の1年生の早い段階で、学生に学問のおもしろさ、楽しさを体験的に理解してもらい、知的活動への動機付けを高めることを目的にしていた。7つの市町の9つの地域で体験授業が実施された。

安芸太田町の井仁地域では、学生はさつまいもの植え付け作業、ほんもろこ養殖の見学、棚田米を使ったおにぎりづくりを体験した。呉市豊町大長・御手洗地域では、大長産のレモンを使ったジャムと化粧水作りを体験した。大崎上島町では、高級柑橘「せとか」の摘果作業とレモン栽培の体験、また、マダイの餌やり、シーカヤック体験、大串海岸での海藻採集などを実施した。

 学生は、世羅町の世羅幸水農園にて梨26一部1の摘果作業を体験し、世羅大豊農園では梨の摘果、ブドウジベレリン処理を体験した。三次市の道の駅ゆめランド布野では、アスパラガス収穫体験や合鴨農法の見学、地元食材を使ったアイスクリーム作り体験学習が実施された。東広島市のファーム・おだでは、学生は麦作後の田植え(手植え)を行った。広島市の吉山川では、学生は、いいね太田川隊によるヨシ刈り作業の後の搬出作業をお手伝いし、川の生き物・生態を観察した。

 三木さんは、TAとして参加した三次市道の駅ゆめランド布野での体験授業の様子を報告するなかで、道の駅が地域活性化の先導役を務め、情報発信の拠点として位置づいていることを説明した。また、農業体験や受入地域の住民の方々とのふれ合いを通して、地域の魅力に触れることができたとの感想を述べた。1年生が大学生として早くから中山間地域や島しょ部のもつ課題について学べたことはとても貴重な経験であり、今後の地域課題を考える上で大きな糧になると、体験学習の成果をまとめた。

 

三つのゼミの報告

 続いて三つのゼミから体験学習の成果、学生が肌で感じた地域課題についての報告があった。島本ゼミの学生は、棚田百選として名高い安芸太田町井仁地区での体験学習の成果を報告した。学生は井仁地区の古い歴史を紹介するとともに、体験学習を受入れていただいた“いにぴちゅ会”の役割を述べ、人口減少と高齢化が進むなかで行われる都市住民との交流体験活動の成果を紹介した。学生は井仁地区の景観の美しさに感動する一方、住民が厳しい生活条件にあることを感じ取った。学生は、多くの人が井仁地区を訪れてくれるよう、棚田や展望台を前面にPRし、都会では体験できない田舎ならではの体験交流に力を入れる計画作りを提案した。

26一部p2 田辺ゼミの学生は、大崎上島町金原農園・シトラスかみじまにて、柑橘栽培や経営のお話を金原邦也氏から伺い、その後に“せとか”の摘果作業を手伝った。学生が調べた摘果作業の紹介があり、柑橘経営の現状と問題点が指摘された。学生は、“せとか”だけでなく多くの品種の柑橘が生産されていたことに驚いた反面、離島という地形から交通の不便さや高齢化という問題を抱えており、島を訪れる人が減少している現実を知った。学生は、活性化に向けた提案として、学生による商品(柑橘)PR、大学内サークル合宿などの誘致、トライアスロンを企画し、給水所に柑橘を生かした製品を置くなどの提案を行った。

 小櫃ゼミの学生は集落営農法人である東広島市ファーム・おだを訪れた。ファーム・おだのさまざまな活動について述べ、特に米粉パンについてゼミ学習の成果を説明した。また、なかやま牧場との間で行われている堆肥と飼料の交換、循環型地域農業の確立に向けた協働活動が紹介された。ファーム・おだは、脆弱な生産構26一部p3-1造と農業従業者の減少による地域農業の低迷、過疎・高齢化や担い手不足による集落機能の低下といった諸問題の解決のために設立された。学生は、法人化により共同活動がしやすくなり、機械利用の効率化が図られると考えた。女性・高齢者の活用、経営基盤の強化や人材育成といった効果が表れている点も述べた。今後は、他学部生にも体験してもらうことにより、ファーム・おだは新たな視点を得るのではないかと締めくくった。

受入地域からの発言

 3つの学生ゼミの報告を受けて、安芸太田町いにぴちゅ会会長河野司氏からは井仁地区は高齢者を中心とした過疎地ではあるが、都市農村交流の体験会を16年間続けていること、広島大学との交流が6年前から始まり、若い人たちの意見を聞き知恵を借りることで、自分たちのよいところを見つめなおすことができ、自信を取り戻すことにつながっているとの話しがあった。今回の体験学習では、初めは、農業をやったことがない学生ばかりで積極性に欠けるという印象を持ったが、体験していく中で彼らの目の色が変わったのではないか。希望としては、今回訪問してくれた学生10名が4年間かけてじっくり地域に溶け込み、自ら課題を見つけ出し、卒業時に見つけ出したテーマに沿って、卒業論文を書いてほしい、とのことである。

26一部p3-2大崎上島町 シトラスかみじま組合長理事金原農園金原邦也氏は、参加学生が柑橘栽培や経営についてよく調べてくれたとの感想を述べた。シトラス上島は、県内で初めて、柑橘生産の法人化をしている。担い手育成に努めており、現在は、農業未経験者が2名従事している。金原氏は、柑橘類の生産推移、市場流通から市場外流通への変化などについて説明した。また、最近生産が盛んになっている国産レモンは、広島県産が80%を占めており、その主産地は大崎上島・大崎下島・生口島であることを述べた。金原氏は、今回の体験学習では学生に摘果作業の他に、夏レモンの栽培を見学してもらったが、今後の広島レモンの挑戦について学生に見てもらいたいと述べられた。

 

 世羅幸水農園組合長理事原田修氏からは、全面協業経営による梨栽培の歴史、直売所を中心に梨狩りなどの観光業にも力を入れ、6次産業化を推進しているとの説明があった。平成11年には31団体が世羅町の世羅高原ネットワークを組織し、現在は71団体までに参加団体が増えている。特に女性の力が加工・販売・PRといったところで非常に生かされており、今年からグリーンツーリズム(民泊事業)に注力している。原田氏は、広島大学の学生にはモニターとしてだけでなく、一緒に活動してくれることを期待している。若い町外の人の意見を聞いて、課題を見つけ解決していきたいと考えている。

 討議では、東広島市 ファーム・おだ組合長理事吉弘昌昭氏が、学生が実際に現場に出て、体験してもらうことで、農業というものがどういうものであるか考える良い機会になったのではないかと述べた。今後は継続して体験学習に取り組んではどうかとの提案があった。若者が魅力を持って就農できるようにと考えて法人化に取り組んでいるので、学生の中から就農や定住を考える人が現れて欲しいとの期待が寄せられた。呉市豊町大亀農園大亀孝司氏からは担い手育成に関する質問が寄せられた。

 

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