体験授業と地域講義
担当ゼミ責任者 田辺創一
地(知)の拠点担当教員 大泉賢吾・天野通子・細野賢治・山尾政博
世羅町大豊農園の概要
世羅町にて40ヘクタールの果樹園を経営する農事組合法人世羅大豊農園は、9名の組合員が参加して1973年に設立されました。山林を切り開いた農地で試行錯誤を続けながら、経営が軌道に乗るまでには十年を要したとのことです。今では、多数の従業員を雇用し、機械化も進められています。現在の総面積は80ヘクタール、そのうちの栽培面積は41.3ヘクタールです。幸水梨の栽培が半分以上の面積を占め、豊水梨、新水梨と続きます。ぶどうは、ピオーネ、安芸クイーン、ハニービナスなどがあります。
大豊農園の特徴は、「山の駅」と呼ばれる販売所がある他、直販が重視されていることです。地域に根ざした大規模観光農園としても発展し、4月には梨の花まつり、夏から秋にかけては梨狩り、ぶどう狩りで大勢の観光客が訪れます。
今年度、世羅町では幸水園とともに大豊農園に体験授業を受け入れていただきました。梨の摘果が最盛期、田辺ゼミの学生たちの体験も摘果を中心に行われました。
大豊農園の歴史と活動
実習に先立ち、祢冝谷組合長から大豊農園の歴史と現在についてお話ししていただきました。1973年に設立して以降、組合は苦労を重ねながら農地を整備し、県、町、農協の指導や協力を得ながら栽培技術を確立し、しっかりとした経営になるよう努めてきました。土作りを大切にする一方、省力化して能率アップをはかるような作業体系にするようにも心がけられておられます。
完全協業の農園にすることによって、制度を利用した資金の借り入れが容易になり、個人ではできない投資や作業ができるとのこと。また若い人、組合員で助けあうことによって、仕事を選びながら農業をできるというメリットがあります。幸水農園が手がけていた梨栽培が大いに参考になったそうです。
大豊農園の運営方針は、組合員相互に協業経営に対する理解を深めよい人間関係を保つこと、管理能力を高めること、そして何よりも健康管理と生きがいある農園経営にすることだそうです。こうした方針のもと、若い人たちの参加があり、農園には新しい風が吹いているそうです。
祢冝谷組合長のお話しを受けて、田辺ゼミの学生たちからはいくつかの質問がだされました。どのような若い人たちに来て欲しいか、という質問には、はきはきした人で仲間との連携を保てる人とのお答えでした。
梨の一時摘果の体験作業
広い農場に出て作業の準備を始めましたが、まずは祢宜谷組合長に摘果の仕方をご説明いただきました。梨棚の中の梨の木は、花から幼果になっていますが、たくさんの幼果をそれぞれの各着果位置で3果程度に摘果するのが作業でした。思い切って摘果してください、とは言われたものの、初めての学生には不安です。果たして大きな実になるのか。梨栽培にとって最も大切な作業だと教えられた以上、緊張した面持ちで上を見てひたすらハサミを動かしていました。
参加学生たちは梨の摘果を午前中いっぱい続けました。昼休み前にはだいぶ慣れてきたようです。それでも残さずに着実に摘果するのは難しく、終わった後に見てまわることになりました。
昼食後、再び摘果作業でした。この時期、大豊農園は何十人という摘果作業員を雇用しています。1人1日何本、というお話しを聞いて、摘果がいかに大変な作業であるかを、学生たちは身を以て体験することができました。
作業を終えて、学生の代表が感謝の気持ちを祢宜谷組合長にお伝えしました。帰る前には、「山の駅」という大豊農園が運営する販売所を訪れ、梨のアイスクリームやジェリーを食べ、直売所の雰囲気を味わいました。
充実した体験学習でした。
田辺ゼミ体験授業の発表
平成27年7月1日(水)に実施した地(知)の拠点教養ゼミ体験授業発表会における田辺ゼミ(1年生 10名)の発表概要は、以下の通りでした。
- 世羅町にある農事組合法人大豊農園にうかがってきました。
- 組合長の講義で、大豊農園の歴史を学びました。ゼロからのスタート。創設時の苦労。土壌、気候、人材など様々な課題に対処し、農園を大きく発展させてきたお話をうかがいました。
- ゼミ生全員で一次摘果を体験。作業の重要性を教えられ、緊張しつつ従事。身体的にとても厳しい作業であることを実感し、ふだん食べている梨の裏に農家の方々の地道な努力があることを改めて感じました。
- 広大への要望をいただきました。1)梨のPRをしてほしい。2)梨の熟度判定メガネ、サイズ判別カメラなど(以下プリゼンファイル参照)、様々な農業技術の開発に対する大学への期待をうかがってきました。
- 「地道な作業の大切さ。作物の病気との気遣い、経済的な苦労など、農家の現状を知り、生物生産学部で取り組む課題を知った」体験授業でした。
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