第2回フォーラム第2部

第2回 広島大学 地(知)の拠点 円卓フォーラム

(中山間地域・島しょ部対策領域)

地方創生の原動力、持続可能な地域志向型教育

~地域・大学連携の今とこれから~

開催日時: 2015年7月22日(水) 14:35-17:30

開催場所: 広島大学 生物生産学部 C206・C315

 第2部

 第2部(16:20-17:30)では、受け入れ地域・自治体・大学による交流と連携の成果を踏まえ、学生、教員の体験学習に対する評価をご紹介し、地域の皆様から地域志向型教育と人材育成のあり方についてご提案をいただきながら、地方創生の原動力になる人材育成とはどのようなものかを議論することにした。「地方創生の原動力、持続可能な地域志向型教育」の課題は次の通りであった。

              1) 学生と教員は、地域志向型教育の成果と課題をどう考えているか。

              2)受入地域と市町からみた地域志向型教育が抱える課題はなにか。

              3)2年間の活動が地域に与えたインパクトとは。

              4)地方創生活動に結び付く大学での人材育成のあり方

              5)第1回円卓フォーラムでいただいた課題への取組状況。

参加者

生物生産学部生4人、受入地域5か所から10人、関係自治体(県庁含む)11人、TA及び教務補佐員6人、本学教職員20人、合計51人が参加した。

I 趣旨説明と報告

石川副理事の挨拶

 大学本部の学術・社会産学連携室副理事石川幸秀が、2013年度に採択された「地(知)の拠点」整p1備事業(以下、COC)の活動が順調に進んでいるが、地域志向型教育の全学的な波及についてはまだ課題を残していることを説明した。広島県以外の出身の学生が多いことから、広島という地域を知り、その中で問題解決能力等を身に着けてほしいと願っている。全学部1年生の共通取得科目の教養ゼミから始まり、最終年度までには、すべての学生が地域志向科目を受講させたいと考えている、旨の説明があった。

第2部の趣旨説明

 中山間地域・島しょ部領域主担当教員、山尾政博教授が、昨年度から今年度の活動を振り返り、1年生を対象にした体験学習、連携特別講座、フィールドワーク実習・インターンシップと様々なところで相乗効果が出始めた点を指摘した。地域志向型教育の実践が新たな段階に入ってきており、ノウハウを蓄積している。大きな成果は、地域が抱える様々な課題、体験や知識が学生の間に共有され、移転されていることである。その交流の成果が参加学生に留まらず、周辺学生や後輩に伝えられている。

 専門的な地域調査の経験を有する教員や大学院生が、TAとして参加する学生(2年生などに)に伝達する。次には、彼らが1年生に教えていくという、学生間普及、学生から学生への普及といった流れができ始めている。

 地域では地方創生に対する様々な取り組みが進められているが、そこで活躍するリーダー達を特別講義にお招きした。受講する学生の地域課題に関する認識、関心が格段に深まった。2年間の活動を通じて、インターンシップやボランティアとして地域活動に参加する学生は着実に増えている。COCの活動は連携地域では評価されつつあり、地域志向型の教育や研究への期待が寄せられている。連携地域が行う地方創生活動との相乗効果が期待できる段階に入った。

 p2第2部で議論する課題は、第1に、学生と教員は地域志向型教育をどう評価しているかであった。第2には、連携地域から見た地域志向型教育、地域課題研究のあり方とは何かがとりあげられた。第3には、地方創生活動に結び付く大学の貢献とは何かについて、連携地域や自治体関係者からの問題提起であった。

 

体験学習2年間の活動成果

 中山間地域・島しょ部領域、天野通子特任助教は、学生が体験学習をどう評価しているのかということを中心に報告した。今年度、体験学習に参加した学生は、1年生104名、TA23名であった。TAとして参加した学生は2年生、4年生、大学院生で構成されており、今年度より、昨年体験学習を経験した2年生を11名起用した。4年生以上のTAは研究として農林水産業とのかかわりを持っているが、2年生はまだこれからというのが現状だった。

 1年生が体験学習をどう評価したかが示された。96%の学生が「よかった」と評価し、具体的には、「体験内容が楽しかった」、「自然の中で活動ができた」、「農村の現状について勉強になった」、「地域の人と交流できた」の順に高かった。事前学習については、80%の学生が適当であったとした。改善する点として、体験する時間や量がやや不足していることが指摘された。積極的な改善点として受け止められる。体験学習を通じた地域への印象は、60%の学生が地域に対してよい印象を持つようになったことをあげている。

 体験学習に参加した1年生が、地域とどのように付き合いたいかを尋ねた。訪問した地域にまた行きたいという学生は46%に達した。「遊びに行く」だけではなく、「地域の体験活動・行事に参加する」といったp3-1積極的な意見が見られた。また、「農山漁村に関する授業を履修する」といった学習意欲にもつながっていた。地域とのかかわり方については、ゲストとして地域とのつながりを求めるだけではなく、将来、地域側の立場で活動をしたいという学生もいた。1年生を対象とした体験学習が、地域志向型教育の動機づけを十分に果たしたと考えられる。

 注目したいのは、上級生TAの意見である。一年生と同様に「体験が楽しかった」などの回答もあったが、「農作業の大変さ、難しさ」、「生産者が持つ知識の豊富さ」、「生産者の技術の高さ」、「地域づくり、活性化の取り組み」を学ぶ中で、「地域が持つ力強さ」、「地域維持の大変さ」を感じていた。そうしたことから、「ほかの地域の状況も知りたい」、「もっと農林水産業について学びたい」といった学習意欲や、「収穫に行きたい」、「地域の活動に参加したい」といった地域活動への意欲など、地域や農林水産業に対する興味を深めていた。上級生TAと2年生TA、1年生との間には、これまでになかった地域農漁業を媒介にした縦のつながりができ始めていた。

p3-2学生に対する教育効果として、次の4点を指摘できた。第1に、昨年に引き続き、1年生は体験学習を通じて、地域への興味、関心を深めるきっかけを得ていた。第2に、2年生はTAとして参加することにより、地域との接点を深めることができた。第3には、下級生から上級生へ成長する過程で、地域への関心が深まり、学生が地域を自分の活動や研究対象としてのフィールドに位置付けていた。第4に、上級生から下級生への縦のつながりができ始めたことは、地域と学生、大学の継続的な関係構築への可能性が強まっていることであった。

体験学習から地域志向型教育への発展

中山間地域・島しょ部領域主担当教員、細野賢治准教授は、体験学習から地域志向型教育への発展について、以下の4項目を中心に報告した。1.体験学習に関する学生の自己評価、2.担当教員による体験学習の教育効果に関する評価、3.2014年度入学生(2年次生)における就学意欲の変化、4.「地域志向型教育」に向けた今後の展開と課題、である。

 教養ゼミ体験学習に関する学生の自己評価を、2014年度と2015年度で示した。体験学習の感想は、「とてもよかった」、「よかった」の割合を足すと概ね90%を超えたが、2015年度のほうが「とてもよかった」の割合が高く、58%⇒70%と伸長したことが大きな特徴であった。何に対して満足したかは、2014年度は「無回答」が34%と多かったが、1%と大幅に減り、「自然の中で活動できた」という項目が11%⇒48%、「農村の現状について勉強になった」が6%⇒40%と特に大きな伸びを見せた。

 p4体験学習の教育の在り方が発展してきた。事前学習が十分だったかを尋ねたところ、「十分」と答えた学生が増えた。地域とどうかかわりたいかについては、昨年度は「遊びに行く」が最も多かったが、今年度は、その割合が減って、「地域の行事に参加する」、「情報収集・発信」、「サークル活動・課外活動」など地域との積極的なかかわり方を求めていた。

 

教養ゼミを担当する教員による体験学習の教育効果に関する評価では、昨年度10名、今年度10名、うち4名は昨年度も参加であるため、16名の教員によるアンケートの結果を得た。体験学習の導入による教育への有効性については、「非常に有効62%」、「有効であった25%」、「やや有効であった13%」と、すべての教員が評価していた。生物生産学への関心については、「やや高まった」まで含めると87%の教員が高まったと評価していた。顕著な回答は、地域への関心についてであった。「非常に高まった」、「高まった」という回答が94%と高い評価を与えていた。担当教員は、COC活動における教育効果を次のようなキーワードで表現した。「地域の創意工夫の姿を間近でみられた」、「知識以外の力となるので、将来にどのような進路に行っても、この経験を生かして実践から課題を考える力につながると思う」、「課題解決力が向上する」、「主体的に考え、問題を解決する能力が高まる」、「具体的な事例に触れる」、「自ら考え行動する学生」があげられ、初期学習としては、主体的な学習ができる学生が増えたと考えていることがわかる。

 2014年度入学の2年生における修学意欲の変化が特徴的であった。2年生11名がTAとして参加し、うち8名は複数回参加し、1年生の体験指導を担当してくれた。また、中山間地域・島しょ部連携特別講座での受講者も19名中13名が2年生であった。インターンシップ受講者の半数15名が2年生であった。2年生はコース分属を控えているが、自主的に研究室を訪問し、先生方に研究の内容を尋ねるといった積極的な姿勢を見せた。地域課題だけでなく、生物生産学全体における問題意識と修学意欲が向上していることがわかった。

IMG_5684 「地域志向型教育」の充実に向けた今後の展開と課題が4つある。第1は、学生が自ら地域に出向いてレポートを作成するフィールドワーク特別演習の充実である。昨年度は、5名の受講生であったが、今年度は2倍にしていく目標を掲げている。第2は、地域との共同による学生の自主活動へ誘導する課題である。昨年度は大長の櫓祭りや世羅高校とのコラボワークショップを実施したが、今年度は、昨年に引き続き大長の櫓祭り、井仁地区見守り企画、大崎上島町都市農村交流活動等を企画している。こうした活動では、COCの枠にこだわらず、広島県や各市町の企画に学生が積極的に参加していけるように促していくことが必要である。

 第3には、卒業論文における地域志向型テーマの設定数も前年度以上にすることである。第4に、大学際のホーム・カミング・ディや学部公開などの行事の中に、地域とのコラボレーション企画を設け、地域・地方行政の企画に学生・教員が積極的に参加することである。地域志向型教育を充実させるには、地域と大学の双方が関係性をより深めながら、双方がメリットを共有することが大切である、と細野准教授はまとめた。

II 円卓フォーラムの討論

学生と教員は、地域志向型教育をどう評価しているか

 円卓フォーラムの討論は、准教授細野賢治が担当した。冒頭で紹介された三つの検討課題について述べ、最初に、「学生と教員は、地域志向型教育をどう評価しているか」について意見を求めた。

p6 生物生産学部吉村幸則教授は、教養ゼミのチューターとして安芸太田町井仁地区の体験学習に参加した。学生の中には、田植えを経験した者もいれば、一度も経験したことがない者もいた。大半の学生は、中山間地域を訪問したことがなく、最初はおとなしかったが、現場に行って田植えを始めると笑顔が多くみられるようになった。自然の中での経験ということで非常に良い経験になった。担当学生からは、インターンシップの相談を受けるなど、学生の地域に対する関心や意識が非常に高まっていることを感じた。

  生物生産学部実岡寛文教授は、世羅幸水農園に教養ゼミの学生を引率したが、最初は、学生が経験したことがないので迷惑をかけるのではないかと不安な気持ちがあったという。しかし、学生たちは世羅の農業や梨栽培について、事前学習に熱心に取り組んでくれ、自信を持って体験学習に臨めた。学生は、生物生産学(農学)を知らない学生が多かったため、このような体験学習が非常に役立ったと評価していた。今後、2~3年生になっても地域に行けるシステムが必要である。

 生物生産学部冨永るみ講師は、ファーム小田で実施した田植え体験、地域内の農業視察のことに触れ、実験室での研究だけでなく植物を現場で育てることを体験できたことは、学生にとって非常に良い経験になったと述べた。

 生物生産学部2年生廣本好美さんは、昨年度は大長で体験学習をし、今年度は、TAとして大長、JA芸南、井仁の3カ所に参加した。1年次の体験学習を通じて地域への関心を持ち、2年生になりTAとして参加することにした。今回は、体験するだけでなく、1年生にアドバイスする必要もあり、地域をより深く知ることができた。また、1年次は目の前の体験に精一杯であったが、今回は、体験学習に参加した地域を比較し、自分なりの共通点や地域の活動方法など発見するなど、非常におもしろかったとのことである。

 p7生物生産学部2年生上田美月さんは、1年次はファームおだにて田植え体験をし、今年度は、大長、JA芸南、井仁の3カ所にTAとして参加した。食品に関することを学びたくて生物生産学部に入学したが、今は、地域体験学習を通じて、農業への興味をもっているとのことであった。広島県の農業就業者の高齢化の実態をみて、地域の取り組みに特に興味を持ち、中山間地域・島しょ部連携特別講座にも参加した。2年生になり、地域の方々と話す際、これまでに比べて深い理解ができるようになり、楽しいだけでなく意識が変わったと感じた。COC活動に参加し、地域活性化や6次産業化といったことに興味を持つきっかけとなった。

生物生産学部4年生黒木大揮さんは、TAとして世羅大豊農園、世羅幸水農園、ファーム・おだ、大崎上島町に参加した。1年次の時には地域体験活動はなかった点を述べた。仮に、1・2年次で体験学習に参加していれば、その後のコース分属や研究室配属を考えるうえで大いに参考になり、このような体験ができていたら、今とは異なった理由で勉学に勤しんで行けたのではないか、と述べた。1度の経験だけではなく、他の学年でも参加できれば、知識も深まり、進路決定の面でも良い経験になると提案した。

 生物生産学部4年生林雄大さんは、TAとして、道の駅布野および世羅幸水農園に参加した。1年次にこのような体験学習があったらと思ったとのことである。授業の一環ではなくとも、視野を広げていく機会があればよい。1年生は、体験学習を“きっかけ”で終わらせず、継続して様々なことに参加して欲しいと思った。

 司会の細野賢治准教授は、学生・教員双方から出た意見として、体験と体験を深めるためにも、複数カ所を回る必要があるのではないかという点を指摘した。学生にとっては、進路決定や興味が変わるきっかけにもなっていると述べた。

連携地域から見た、教育の在り方

 続いて、体験学習、インターンシップの受け入れなど、大学の地域志向型教育に日頃からご協力いただいている方々から、教育の在り方についてご発言いただいた。

p7-2 安芸太田町いにぴちゅ会、会長河野司氏からは、井仁地区の簡単な紹介があった。広島大学との付き合いは8年になる。人口53名と非常に少ない地域で、このまま行けば10~20年先に地域が消滅するのが見えているという。これまでは、都市農村交流など目先の課題解決のために広島大学に協力を仰いでいたが、ここ数年は、学生にも井仁の現状を知ってもらい、農業体験をするだけではなく、若い力・知恵を生かしながら、10~20年先に地域を存続させるために、何をしたらよいのか一緒になって考えてもらっている。これが井仁地区の高齢者の大きな刺激になっている。学生には卒業までの4年間で深く関ってもらい、井仁地区を上手に利用して勉強を深めて欲しい。

 呉市豊町大長大亀農園、大亀孝司氏は、広島大との交流のきっかけと広がりの経過を説明した。大長も少子高齢化が進んでおり、周辺にいる若者が少ないので、TVのニュース等を通して最近の若者を判断していた。しかし、体験学習で訪問される学生を見ていると、いまでも素晴らしい若者はたくさんいると感じた。体験学習では、最初からきつい仕事をさせることはできなかったが、積極的でもっと多くの仕事を望む学生もいたことから、受入側も体験学習のメニュー等考えていかなくてはいけない。広島大学には、今後も、地域との交流を深めていただきたい。

 三次市大前農園、大前憲三氏は、体験学習は、アスパラの摘みとりだけを行うのではなく、零細経営の農家のためにも、生物生産学部ならではの、6次産業化の方向性を考えていただきたいと表明をされた。このたび、アスパラ麺を開発しました。味も食感も素晴らしく、ぜひ売り出していきたいのですが、加工後すぐに色落ちしてしまうという課題が見えています。こういったアスパラ麺の色落ち対策等も検討してほしい。今後も今以上に深い関係で、長く付き合って行きたいとの表明をされた。

 司会の細野賢治准教授は、地域の方々からは、大学との連携は10~20年先の地域の未来を見据えて考えたいという意見や、本物の若者の姿がわかった、研究も含めて深く地域にかかわってほしいという意見がだされた点を指摘した。

p8 世羅町産業振興課、和泉美智子氏は、世羅町ではやまなみ街道が開通し、道の駅ができ、いよいよ通過点になってしまうのか、目的地になるのかの転換点にある点が説明された。そのような中、6次産業化に取り組む73戸の農家を対象に、体験型農業を進めていくべく、体制を整えているところである。先日、COC体験学習会の終了後に、受け入れ先であった世羅幸水農園、世羅大豊農園、体験インストラクターでどのようにしたらより喜んでもらえるか勉強会を持った。今後も、教えるだけでなく地域の側も学びたいと考えている。高齢化が進み、草刈等のきつい作業をやるのが難しくなってきている。Iターン等も含めて、町外からの移住にも力を入れている。

 三次市企画調整課、杉谷幸浩氏は、昨年に引き続き布野町で体験会を実施した点に触れた。農業に経験がない学生が多いのは、ずっと農業に関わりながらに暮らしている人間としては新鮮であった。昨年度は、楽しいことを盛りだくさん経験してもらいたいと思ったが、今年度は、受け入れる際に目的を持った経験をしていただけるように考えた。地方創生が叫ばれており、行政職員としては、農村の生活モデル、農村で食べていける仕組みを作る必要がある。体験学習の場を提供するため、地域の人と話をする機会が増えた。そのようななかで、大学との連携を今後も深め、地域の人も一緒に育てていただきたいと考えているとの思いが述べられた。

 広島県地域政策局中山間地域振興課、三島史雄氏は、以前は安芸太田町役場にて、現在は県庁にて中山間地域振興に携わっている。今回の学生自己評価の中で、中山間地域・島しょ部のリアルな現状を学生が知り、自分のこととして受け止め、地域の行事に参加したいという気持ちをいただけたことは、中山間地域・島しょ部振興にかかわる人間としては、非常に心強いことだと表明された。広島県は2013年度から中山間地域振興条例を作り、昨年度には中山間地域振興計画を策定した。新たな振興計画では、人づくりという面を重視している。今年度7月25日から「ひろしま『ひと・夢』未来塾」を開講し、地域のために何かしたいという志を持った若者(20~40代)が集まってきている。地域志向型教育を通して、このような場に出てくる学生を育てていただきたい。そういった大学生が地域に出て体験する活動については、県も一緒に取り組んでいきたいとのことであった。

司会の細野賢治准教授は、交流を通した若者の人づくりが重要であり、地域と行政が話す機会が増えたといってもらえたのは大きな成果であった、と述べた。討論は、地方創生活動に結び付く大学の貢献とは何か、に移っていった。

地方創生活動に結び付く大学の貢献とは

 広島大学産学・地域連携センター塚本俊明教授からは、広島大学が数年前から市町との間で包括協定等を締結し、教育と研究の両面でお世話になっているとの感謝が述べられた。今までも広島大学p9と地域との連携活動は、様々な地域で行われてきた。例えば、建築学科の学生が世羅町に行きワークショップをおこなったことがあった。しかし、これまでの活動は単発的なものがほとんどで、地域との連携を継続的に行えるような体制ではなかった。COCの活動として、組織的かつ継続的に地域連携活動を実施したのは、生物生産学部が初めてである。

 ただ、大学が地域との連携を持続させていたくためには、“連携疲れ”を起こさせないようにしなければならない。受け入れ地域では、初めは大学生が来てくれるのがうれしいと思っても、毎回同じような学年が、同じような内容で学びに来るため、地域では同じことの繰り返しになってしまう。現在の関係に甘えることなく、大学では人材をどのように育て、送り込んでいくのかということを考えていくべきである。絶えず、ステップアップしていくことが求められている点が強調された。

コーディネーターからの提案

 中山間地域・島しょ部対策、大泉賢吾コーディネーターは、域学連携を進めていくうえで、塚本教授が指摘した“連携疲れ”を起こさないよう、地域・自治体と大学の連携活動の情報共有や期待の共有に努めている点を述べた。連携地域では、まず短期的な成果への期待というのが見えた。これは、イベントの参加者や商品開発といった目に見えるところの効果に対する期待である。一方、中長期的な成果への期待はより高く、地域を理解し、地域に役立つ人材の育成を大学に強く要望している。連携地域の方々の中には、自分の地域・目先のことだけでなく、多くの地域に役立つ人材に育ってほしいという崇高な理念をお持ちの方が多くみられた。域学連携よりもさらに意識が高く、メリットで説明できない地域への深い思いを受け、地域が学生・教職員・大学を育ててくれていると感謝している。

 地域と大学の連携をどう位置付けるかを検討する際には、目標とする地域の姿を共有しなければならないのではないか。地域に住む人々やそこにある組織と学生、大学が、質の高い組織的交流連携を築けば、或いは、学生・若者が地域社会の支援で成長することができれば、地域はその人材で持続的成長を遂げることができるのではないかと思われる。

 地域と市町が目指す人材育成の目標を、大学が共有しなければならない時期にきている点が、コーディネーターの立場から強調された。

フォーラム討論の総括

司会の細野賢治准教授が討論をしめくくり、山尾政博教授がまとめを行った。二部では、学生・教員・地域の皆様から様々な意見をいただくことができ、大学としては、COCを通じた地域志向型教育の在りp10方について多くのヒントを得ることができた点が強調された。連携地域では、大学に対し、短期的にはもちろんだが、中長期的に地域に貢献できる人材を育成できるかを問い始めている。地域志向型教育の目標をどこに定めるかということも問われている。大学の教育・研究の場では、「地域志向」の大切さが強調されるが、地域では、地方創生に向けた活動が大きなうねりになってきている。これらは、いずれどこかで結びつくものである。

 広島県で実施されている地方創生に関する活動、地域志向人材の育成に、COCがどのように貢献できるのかを検討する時期にきている。今後も広島大学は地域との連携を続けていくが、そのため連携地域には、“連携疲れ”」を引き起こさせないよう、効率的かつ効果的な協力関係を築いていく所存である、との決意が述べられた。山尾教授は、受入地域のご協力者、自治体関係者からいただいたご意見やご提言を踏まえ、今後どのような方向を目指すべきかについて、検討していく所存であると述べて、討論を締めくくった。

閉会挨拶

 第2回円卓フォーラムを閉会するにあたり、生物圏科学研究科長補佐河合幸一郎教授により、参加いただいた学生、受入地域の皆様、自治体関係者の方々、教員に対し、謝意が示された。

 

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